ニコニコ動画「流れるコメント」特許調査レポート

2026-03-22 調査 — ドワンゴ特許の範囲・使える/使えない整理・回避策

2026-03-22
自前配信PFでのコメント表示機能の実装可否
調査完了(実装前に知財弁護士への相談を推奨)
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調査の背景と結論

調査結論

ニコニコ風の「流れるコメント」は簡単には使えない。特許の核心は「コメントが流れる」こと自体ではなく、「流れるコメント同士が重ならないよう自動調整する仕組み」。2038年まで有効な特許があり、ドワンゴは「見つけ次第つぶす」姿勢を明確にしている。

背景

  • 自前のライブ配信プラットフォームを構築予定
  • ニコニコ動画のように動画・配信画面の上をコメントが右から左に流れるシステムを実装したい
  • ドワンゴが特許を保有しているため、利用可否を調査
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ドワンゴの主要特許

特許番号 出願日 内容 満了時期 状況
第4695583号 2006年12月 コメント表示方法(重なり回避) 2026年12月 残り約9ヶ月 あと約9ヶ月で満了
第4734471号 2006年12月 コメント表示方法(文字サイズ変更による重なり判定) 2026年12月 残り約9ヶ月 あと約9ヶ月で満了
第6526304号 2018年10月 コメント配信システム(サーバ+端末の全体構成) 2038年10月 あと12年有効 最大の障壁。あと12年有効

ドワンゴはコメント関連で約103件の特許、明細書含め約236件を保有。上記は主要3件。

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特許が守っている範囲

請求項の核心

特許第6526304号の請求項(要約):

  • サーバとネットワーク接続された複数の端末で構成されるシステム
  • 端末側で、複数のコメントが動画上で水平方向に移動表示される
  • かつ、互いに重ならない位置に自動調整される

つまり「流れる」だけでなく「重ならないよう自動調整する」の組み合わせが保護対象。

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FC2との裁判経緯

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2016年: ドワンゴがFC2を提訴
FC2の動画サービスでニコニコ風コメントを使用
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2018年 東京地裁: ドワンゴ敗訴
FC2の実装は特許クレームと異なると判断
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2022-2023年 知財高裁: ドワンゴ逆転勝訴
約1,100万円+別件で1億円の損害賠償命令。「海外サーバでも日本向けなら特許が及ぶ」と判断
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2025年3月 最高裁: ドワンゴ勝訴確定
FC2の上告棄却。サーバを海外に置いても日本ユーザー向けサービスには日本の特許が及ぶという先例が確立
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ツイキャス事件

2024年8月、ツイキャスが「コメントを画面に流す(β)」機能を実装 → ドワンゴが特許侵害の可能性を指摘 → 数日で機能削除に追い込まれた。ドワンゴCOO栗田穣崇氏は「(ツイキャスから)ご連絡はいただいておりません」と発言し、無許諾実装への厳しい姿勢を示した。

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リスク一覧表

やりたいこと リスク 理由
右→左に流れるコメント+重なり回避 高・NG 特許のど真ん中。第6526304号が2038年まで有効
下→上に流れるコメント 中・グレー 特許は「水平方向」と記載。均等論で侵害認定リスクあり
流れるけど重なりを許容(回避ロジックなし) やや低 特許の核心は重なり回避。他の関連特許(236件)に注意
画面端にポップアップ表示(スパチャ的) 動画上のオーバーレイ移動ではない
チャット欄に表示(YouTube Live式) 問題なし 動画上に表示しない。YouTube/Twitchと同じ
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bilibiliが使える理由

bilibili(中国)はニコニコとほぼ同じ弾幕システムを使っているが、主に中国国内ユーザー向けサービスであるため日本の特許権の適用外(属地主義)。ただし2025年の最高裁判決で「日本ユーザー向けなら海外サーバでも特許が及ぶ」と確定したため、日本向けサービスではサーバの場所を海外にしても回避にならない。

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ライセンス取得は可能か

  • ドワンゴは公式なライセンスプログラムを公開していない
  • 直接交渉は可能だが、小規模法人への実績は不明
  • 費用は非公開(FC2への損害賠償は約1,100万円+1億円)
  • TiVo社とのライセンス契約実績はあるが、コメント特許かは不明
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現実的な選択肢

A
チャット欄+画面端ポップアップ(安全策) 推奨
95%
B
重なり回避なしの流れるコメント(ややリスク) 要相談
60%
C
ドワンゴにライセンス交渉(成否不明) 要交渉
40%
D
特許満了を待つ(2038年まで12年) 非現実的
15%
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特許回避の設計案

回避案 見た目 リスク 体験への影響
重なり回避ロジックを省く コメントが流れるが重なることがある 大量コメント時に読みにくくなる
垂直方向(下→上)に流す コメントが下から上に浮かび上がる 新鮮だが慣れが必要
フェードイン/フェードアウト ランダム位置に出現→数秒で消える 「流れる」感は薄い
画面端ポップアップ スパチャ風に上部/下部に順次表示 ほぼなし YouTube Liveに近い体験
キャラの吹き出し表示 コメントがキャラの吹き出しとして表示 ほぼなし 世界観に合った独自体験。特許と無関係
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オープンソースと法的リスク

ライブラリ 説明 ライセンス
CommentCoreLibrary JS製の弾幕エンジン。ニコニコ・bilibili対応 MIT
OpenDanmaku PHP製の弾幕ストレージサービス OSS
Comment9 Node.js製のリアルタイム弾幕フレームワーク OSS

ソフトウェアライセンス(MIT等)と特許権は別物。 CommentCoreLibraryがMITで無料公開されていても、そのライブラリを使って日本国内向けサービスを構築し、ドワンゴの特許クレームに該当する機能を提供すれば特許侵害となるリスクがある。ライブラリ開発者(中国拠点)は日本の特許の影響を受けないが、日本でサービスを提供する利用者はリスクを負う。

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AI提案

提案 配信プラットフォームのコンセプト「ドット絵マンション」と組み合わせるなら、コメントをキャラの吹き出しや部屋内のオブジェクトとして表示する方式が最も安全かつ独自性がある。「流れるコメント」にこだわらず、マンションの世界観に溶け込むコメント体験を設計すれば、特許問題を完全に回避しつつ、他にない体験を作れる。

実装前には必ず知財専門の弁理士・弁護士に相談すること。ドワンゴは236件のコメント関連特許を保有しており、素人判断での回避設計は危険。